東京は泊まりやすい?

一番の不満は「値段」じゃなかった


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急増する外国人観光客。2020年には4万4000室が不足すると見込まれ、政府は民泊普及の規制緩和にも前向きだ。
しかし、当の外国人たちはすでにAirbnbを頻繁に利用している。
ホテルではダメなのか、宿泊施設に何を求めているのか......。
東京は泊まりやすい街ですか? 本音を聞いてみた
【シリーズ】五輪に向けて...外国人の本音を聞く
アメリカ人のエリス・ワイアットさん(31歳)は今年の夏、恋人と一緒に日本を訪れ、約2週間かけて東京や京都などを観光した。
泊まったのは普通のホテルだけではない。民泊仲介サイトのAirbnb(エアビーアンドビー)も何度か利用した。
Airbnbを使い、東京・墨田区のマンションの1室をまるまる貸し切って1泊。
ダブルサイズのベッド、キッチン、洗濯機つきで約75ドルだった。
「部屋は広くはなかったけど、スーツケースの置き場所に困るほど狭い日本のビジネスホテルに比べれば快適だった」と彼女は言う。
「東京の人たちがどんな生活をしているのか垣間見えたのも良かった」
Airbnbを利用したのはなぜ? 「東京のホテルは、おそらくニューヨークを除いてアメリカのどの都市のホテルよりも狭い」とワイアットさん。
ビジネスホテルよりも安く、広さがあるのが民泊を選んだ理由だという。
日本を訪れる外国人観光客の数が、今年初めて2000万人の大台を突破した。
観光庁によると、1~10月の累計で2011万人を超え、年末までに2400万人前後に達する見込み。
ワイアットさんはその2400万人の中の1人だ。
政府は東京五輪が開催される2020年までに「訪日外国人数4000万人」を目標に掲げているが、まったくの夢物語でもなさそうだ。
ただし、外国人観光客がこのまま急増を続ければ、ホテルなどの宿泊施設が足りなくなるといわれている。
みずほ総合研究所によれば、2020年には東京や大阪を中心に「4万4000室が不足」する可能性があるという。
【参考記事】 Airbnbが家を建てた――日本の地域再生のために
Airbnbだけで300万人訪日、トップは韓国人
東京都心では五輪での需要拡大を見越して、「アマン」や「星のや」などの高級ホテルから中級・ビジネスホテルまで新増築ラッシュが続いているが、 そうした供給の増加を見込んでも客室は不足すると指摘されている。
そこで打開策として注目されているのが、一般の空き部屋や空き家を貸し出す「民泊」だ。
ワイアットさんが利用したAirbnbは、民泊仲介サイトの世界最大手だ。
同社は11月、今年1~10月に同社を利用した訪日外国人の数が300万人を突破したと発表した。
前年比2倍以上の伸びを見せているという。利用者を出身国別にみると、トップは韓国で、中国、アメリカ、香港が続いた。
ホテル不足問題を解決したい政府も、民泊普及のための規制緩和に前向きだ。
民泊を営むには旅館業としての許可を得る必要があるが、現在はルールが曖昧で、無許可でAirbnbに登録している部屋は多い。
政府は今年4月に旅館業法の政令を改正して条件を緩和したほか、さらに規制を緩めた民泊新法の制定も目指している。
新法ではインターネットで届け出るだけで営業可能になるなど、事実上の「全面解禁」になる見込みだ。 【参考記事】東京五輪まであと4年、「民泊」ルールはどうする?
このように増加する訪日外国人のニーズを満たすための「宿づくり」が進んでいるが、当の外国人観光客は東京の宿にどんな印象を抱いているのだろうか?
ワイアットさん以外にも、東京を訪れたことのある外国人に聞いてみた。
「サービスと設備は良いが、狭さに驚いた」
東京を何度も訪れている韓国人のファン・ジェウォンさん(27歳)は、 サンルートやアパなどのビジネスホテルに滞在することが多いが、気になるのは部屋の広さだという。
「女性はまだ大丈夫だけど、弟や知人の男性にホテル探しを頼まれると悩む」。
リピーターだけに、ここ数年で東京のホテル料金が値上がりしているのも感じているらしい。
ビジネスホテルより少し高めの中級ホテルでも、「狭い」という声はあった。台湾人の林軒民さんは、 VIP会員であるハイアットまたはプリンス系列のホテルを利用することが多く、たいてい1泊2万円前後の部屋に泊まる。
「東京のホテルは他の国や都市と比べて宿泊料は適正だと思うが、部屋は広いとは言えない」と、林さんは言う。
今年9月に家族で東京観光に来たときは、ハイアットでもプリンスでもなく、新宿駅近くに昨年開業したホテルに1泊2万円弱で4泊した。
新しいホテルを「試してみたい」と選んだ結果、「サービスも設備も良かったけど、あまりの狭さに驚いた」と言う。
一方、高級ホテルに宿泊した場合は、部屋の広さよりも値段が気になるところ。
台湾人のサンドラ・チャンさんは今年7月、夫と娘2人と一緒に初めて東京を訪れた。
旅の一番の目的だったディズニーランドに隣接するホテルに3泊、東京駅直結の東京ステーションホテルに1泊した。
それぞれ1泊あたり5万円台後半から6万円以上の出費だった。
「部屋の広さや清潔さ、スタッフの気遣いやレストランには大満足だったけど、宿泊料金は高かった」と、チャンさんは言う。
それでも「タイトなスケジュールのなかで、まだ7歳の次女を連れて歩くことを考えて、ホテル選びでは交通の利便性を重視した」
「東京で和の旅館」は外国人にウケるか
あえて「狭小ホテル」を選択した人もいる。
11月に初めて日本を訪れたフランス人のエマニュエル・ロワラレントリさん(27歳)は、東京で最初の夜をカプセルホテルで過ごした。
「フランスにはこんな宿泊施設はないから」と、物珍しさから選んだ宿だった。
2日目からの5泊はサクラホテルを利用。宿泊客の大半を外国人観光客が占めるホステルで、個室と相部屋がある。
ロワラレントリさんは2段ベッドが4台詰め込まれた8人用の相部屋を選んだ。 「ひとり旅行のときは、こういった宿に泊まったほうが人との出会いがあるから」と、彼は言う。
一方、友人と一緒に旅行するときはAirbnbを好むらしい。
4~5人で1軒家または広いアパートを借りれば、十分なスペースを確保しながら安く上げることができる。
キッチンもついているので、「外食が高くつく国で長期滞在する場合は自炊で節約にもつながる」。
東京のあとは京都と大阪ヘ向かい、約2週間の日本観光を楽しんだロワラレントリさん。これまでヨーロッパや北米、 カリブ海の国々などを旅行したことがある彼は、「日本(の大都市)のホテル料金は、パリやロンドンと同じぐらい高い」と言う。
【参考記事】「365日アートフェア」を掲げ、ホテル アンテルーム 京都が増床リニューアル
彼が今回の旅行で唯一奮発したのは大阪で泊まった旅館だ。「日本の伝統的な宿に泊まってみたかった。高額なので1泊しかできなかったけど」 確かに日本旅館の「和」は外国人観光客への大きなアピールポイントになる。
東京の大手町で7月にオープンした「星のや東京」は都心で体験できる高級旅館を売りにし、 11月にリニューアルオープンした「グランドプリンスホテル高輪」は一部を旅館風に改装した。 政府も宿泊施設の不足分を補うために、ホテルに比べて稼働率の低い日本旅館の集客力を高めたいと考えている。
とはいえ、東京で旅館に泊まりたいというニーズは、実はそれほどないのかもしれない。
「欧米化されたホテルではなく日本の文化や食事に触れることができる旅館は機会があればぜひ泊まってみたい」とチャンさんが言うように、 外国人の関心は高いだろうが、 ファンさんと林さんは「旅館に泊まるとすれば地方の街で、東京では泊まらない」との意見だった。
東京で観光や買い物に忙しい旅行者は、宿選びでは交通の便の良さとコストパフォーマンスを重視する傾向があるだろう。
どうせ日本旅館に泊まるなら、地方の温泉につかって、 その土地の料理を堪能しながらゆっくりしたい──そう考えている外国人観光客は少なくないのかもしれない。
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