国家戦略特区民泊行政も後押し

「民泊」は宿泊施設不足の救世主となるか?


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民泊法成立「住宅宿泊事業法案」今後のスケジュール
●民泊サービスとは
民泊サービスとは、「一軒家や共同住宅などの住宅を活用し、宿泊を提供するサービス」のことである。
個人が自宅や空き家、別荘などを宿泊場所として貸し出せば「民泊」になる。もし自分が空き家などを保有し、旅行者に有効活用してもらえるなら、 民泊として貸し出したいと思う方もいるはずだ。
しかし、安易に貸し出しをすれば違法になることをご存じだろうか。
宿泊期間が1カ月未満の「宿泊料を受領して宿泊させる」行為は「旅館業」に当たり、保健所の許可が必要になる。
また旅館業法では、フロントの設置や保健所の立ち入り検査が義務化される。
近年、無許可の民泊が増える中、民泊サービスをルール化し、安全で衛生的な施設を提供するため、 行政が関与を始めたのが、内閣府の国家戦略特別区域法「特区民泊」だ。
2016年1月から大田区が全国に先駆けて民泊を始め注目を集めた。現在大阪府でも民泊サービスが始まり、大阪市や千葉市、北九州市が年内の開始を目指している。
大田区や大阪府等は「特区民泊」に認定されており、旅館業法の適用を除外するという特例を受けている。
●特区民泊とは
特区民泊は、国家戦略特別区域法に基づき、旅館業法を適用されない民泊サービスのことである。
正式名を「国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業」という。名前から誤解されがちだが、外国人旅行者だけではなく日本人も利用が可能だ。
特区民泊に指定されるためには、つぎのような条件があり、市長または区長の許可が必要になる。
1.施設使用期間が7日から10日までにおいて条例で定める期間以上であること
2.一居室の床面積が原則25平方メートル以上であること
3.施設使用の注意事項の説明ができる体制が整備されていること(ごみ処理・騒音・緊急時の連絡先等)
4.消防法令で義務付けられている設備等が設置されていること
5.賃貸借契約及びこれに付随する契約を結ぶこと
6.施設の正当な権利を有することなどがある。
トラブル回避のため、近隣住民に事前に説明することも規定されている。
特区民泊に認定されれば、旅館業法から除外され、一定の管理体制のもと、宿泊者10人未満の場合フロントを設置しなくてもよい。
では、今なぜ行政が民泊を推進するのか。
逼迫する宿泊施設
近年外国人旅行者が急増しており、宿泊施設が不足しているのが現状だ。
観光庁の調査によれば、外国人旅行者の受け入れ数は、2013年に1036万人(世界で27位、アジアで8位)だったのが、 2014年は1341万人(世界で22位、アジアで7位)、2015年には1974万人と前年比47.1%増となった。
また、国内の宿泊旅行者は、延べ人数3億1673万人(対前年比6.5%増)となっている。
全国の客室稼働率は上昇しており、特に東京は2011年に68.0%だったのが2015年は82.3%に、 大阪は2011年の68.2%から85.2%へと全国平均の稼働率60.5%を大きく上回る。
4年後の2020年には、東京でオリンピック・パラリンピックの開催を控えており、ますます宿泊施設が逼迫すると見込まれている。
一方ではインターネットを活用し、空室を有効利用しようとする貸し手と旅行者のマッチングが広く行われている。 ニーズがあるからマッチングが成立するわけだが、旅館業の許可を得ていなければ違法だ。
旅館業法違反だけではなく、分譲マンションの場合、用途制限による管理規約違反に該当する可能性がある。
また、賃貸借契約をしている物件では、転貸(また貸し)が禁止されている場合がある。近隣住民と騒音やゴミ処理などでトラブルになるケースも出ている。
そうした宿泊施設が逼迫している状況と、無許可貸し出しによる近隣住民とのトラブルなどから行政が乗り出したのである。
国はルールの整備とともに、違法業者の把握と対応に迫られている。
今後の民泊サービス
このように宿泊施設の需要が高まる中、人口減少による空室や空き家の有効活用としても、民泊に対する期待は大きい。 一方では旅館やホテルとの競合にもつながるため、 民業圧迫にならないような配慮が必要である。
民泊施設の提供者からは、最低宿泊日数(7日以上)や最低床面積(一居室原則25平方メートル以上)、 建築基準法、消防法などの規制がネックとなり、許可が下りなかったケースや、申請をあきらめるケースが出ている。
宿泊施設提供者からは宿泊日数短縮などの規制緩和を、利用者サイドからは、安全かつ衛生的で快適な宿泊施設が求められる。
特区は東京都、仙台市、新潟市、愛知県、大阪府、広島県、福岡市、沖縄県など全国にまたがる。
さらに全国で民泊の申請が増えれば、外国人旅行者が、日本の生活文化に触れたいというニーズにも応えることができる。
いずれにしても、宿泊施設が不足している現状に変わりはない。
2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、観光立国日本を目指し、快適な宿泊施設を提供するのは急務だ。
制度の整備がされ、提供者・利用者ともに利用がしやすくなり、空室や空き家が有効活用されれば、宿泊施設不足の需要に応えられ一石二鳥である。
空室などを利用して、外国人に日本の生活を知ってもらう「おもてなし」をしてみてはいかがだろう。行政主導の民泊サービスは始まったばかりだ。
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