大阪府特区条例

4月の施行後、認定2件のみ 「違法」は増殖…要件緩和検討


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 訪日外国人の宿泊施設不足解消を目的に、4月に施行された大阪府の「民泊条例」が早くも“有名無実化”している。
人気が高い大阪市は対象外ということもあり、これまでに民泊営業の認定を受けたのは、わずか2件。
一方、マンションの一室などで旅館業法に基づく許可を得ずに営業する「違法民泊」は増加の一途をたどっている。
事業者側に課せられた条件の厳しさも申請が低調な一因とみられ、府は要件の緩和を検討している。(大森貴弘)
大阪市内で賃貸マンション6棟を運営する不動産会社の社長(48)は4月中旬の夕方、管理物件の廊下で張り込んでいた。
「深夜に外国人にインターホンを鳴らされた」「話し声がうるさい」といった苦情が相次いだからだ。
しばらくすると、浅黒く彫りの深い顔立ちの外国人男性4人組が、談笑しながら廊下を歩いてきた。
部屋に入ろうとしたところを呼び止めると、男性らはスマートフォンを取り出し、民泊仲介サイト「Airbnb(エアビーアンドビー)」の予約画面を示した。
部屋の借り主は30代の日本人男性。
「最初から民泊に転用するつもりで借りた」と認めたため、契約違反ですぐに退去させた。
「こんなトラブルは日常茶飯事だが、警察には『制度の移行期だから』と相手にしてもらえない。
早く制度を整えてほしい」と訴えた。
■1年で70倍に
昨年10月に全国初の民泊条例を制定した大阪府は、 平成26~27年の宿泊施設の客室稼働率が2年連続で全国1位。条例はインバウンド(訪日外国人)需要を逃さない妙手になるはずだったが、 施行以降の認定施設は2件にとどまる。
参入希望者には「部屋面積25平方メートル以上」「宿泊日数は7日以上」などの規制に加え、周辺住民への周知義務なども課せられ、 条例に基づく民泊は「使い勝手が悪い」(不動産関係者)。
政令市の大阪市が府条例の対象外となっている影響も大きい。市でも同様の条例が今年1月に成立してはいるが、運用開始は10月以降だという。
一方、違法民泊は宿不足を背景に増加を続ける。Airbnbによると、 ミナミなどの繁華街がある大阪市中央区の27年の民泊の宿泊実績は前年の70倍に増え、伸び率は世界一。
「和」の雰囲気を意識した装飾や飲食の無料提供などサービス合戦も活発化しているが、旅館業法に反することに変わりなく、 住民トラブルなどの問題も依然として残る。
■秋にも改正案
東京五輪が開催される32(2020)年に「訪日外国人4千万人」の目標を掲げる政府は、民泊を本格的に解禁する方針を固めている。
行政の許認可が不要で、インターネットで自治体に届け出るだけで営業を可能にする新法を、来年の通常国会で成立させたい考えだ。
だが、新法は府にとって穏やかな話ではない。
松井一郎知事は条例に基づく民泊事業者の認定を増やすよう指示。
政府に対し、面積や宿泊日数などの要件緩和を求めており、早ければ今秋にも条例の改正案を府議会に提出する予定だ。
府の担当者は「ここまで少ないのは想定外」としながらも、「新法には年間の営業日数を180日以下とする規制が盛り込まれる見込みだが、 府条例にはそうした縛りはない。
民泊事業をトラブルなく進めるためにも、条例は有効であることを訴えていく」と話している。
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